跡取り息子として、叔父の領地で過ごす
伊達家の家臣・山口常成の次男として、現在の山形県米沢市に誕生しました。米沢市といえば、伊達政宗の出生地でもありますね。
しかし山口常成の兄・支倉時正(はせくら ときまさ)の最初の妻との間に子どもが授からなかったため、常長は支倉家の家督を継いだ時正の※嗣子として養子入りしています。
養子入りした7歳から、叔父の領地であった現在の宮城県柴田郡川崎町支倉地区に位置する上楯城(かみだてじょう)で、常長は青年期を過ごします。
しかしその後、支倉時正が最初の妻と離縁。迎えた後妻との間に、久成と常次という2人の男子を授かりました。
そこで伊達政宗は、常長と久成の両名に1,200石だった家禄を600石ずつとし、常長を分家させたのです。
政宗の家臣として、戦国の世を生き抜く
その後の足跡は不透明なところが多いですが、戦国時代後期の天正17年(1589)には、宮城県北部の大名・大崎氏の元へ、政宗の使者として常長が派遣されていたり、天正18年(1590年)に発生した葛西大崎一揆では、鎮圧にあたった武将の1人として名前が記録されています。
また天正19年(1591)に政宗上洛の際、「上洛供衆」としてお供をした名簿に「はせくら六右衛門尉」という名が残されていました。
さらに天正20年(1592)~文禄2年(1593)の豊臣秀吉による朝鮮出兵(文禄・慶長の役)では、伊達政宗隊の一員として朝鮮に渡っています。「※御手明衆」として20人の名があり、常長もその中の一人でした。
なぜ大使に任命されたのか?
常長が大使に任命されたいきさつは、いまだ明らかにされていません。
しかし手掛かりとなる史料が、昭和61年(1986)に発見されました。それは常長の実父・山口常成の切腹と、常長の追放を命じた伊達政宗自筆の書状です。
慶長遣欧使節の出帆直前に、政宗は常長の実父である山口常成に対し「不届きの義につき切腹」とし、連座制により息子の常長にも追放の処分を下していたのです。
ではなぜ政宗は、追放処分を下した常長を大使に抜擢したのでしょうか?
まずは、政宗が常長の能力を高く評価していたということ。そして大使に任命し、異国との貿易交渉という極めて困難な任務を命ずることと引き換えに、追放処分を取り消し、常長にチャンスを与えたのではないかと考えられています。
常長も実父と自身の名誉回復のため、全力を尽くす決意で任務を受け入れたのかもしれません。
常長の帰国後
国内のキリスト教弾圧が強まる中、常長は元和6年(1620年)9月2日に帰国。伊達政宗はこの2日後に、仙台領内でのキリスト教禁止令を発令しています。
その後の常長の消息は不明ですが、1年後の1621年7月1日(1622年没の説もあり)病で亡くなったと伝えられています。
常長の墓といわれる墓所は宮城県内に4カ所もあり、どこに眠っているのか定かではありません。
<支倉常長の墓>
・光明寺(仙台市青葉区北山)
・円福寺(川崎町支倉)
・西光寺(大郷町東成田)
・宮城県大和町吉岡字西風(ならい)の五輪塔
常長という名前について
一般的に支倉常長で知られていますが、本人が名乗っていた記述はありません。支倉自筆史料の署名も「六右衛門」「六右衛門長経」と記されています。
「常長」の名前が登場するのは、彼の死後に支倉家が一時断絶し、寛文8年(1668年)の再興後に編さんされた、支倉家の家系図からです。
先祖がキリシタンであったことを隠すため、後世の子孫が「長経」の使用を忌避し、「常長」と偽って記した可能性があると考えられています。
復元船の解体は2021年の秋以降に
2021年、県は宮城県慶長使節船ミュージアム「サン・ファン館」の全面的な改修に乗り出します。
老朽化が進む木造復元船「サン・ファン・バウティスタ号」の解体は、2021年の秋以降に着手される予定。
復元船の後継船として、繊維強化プラスチック(FRP)製で、実物の4分の1という大きさのものが製造されるそうです。
サン・ファン館は今後、展望棟やドック棟を一新。リニューアルオープンは2024年度を予定しています。
伊達政宗の壮大な夢を乗せて出帆した慶長使節船「サン・ファン・バウティスタ号」。この400年以上前の偉業を、あなたもサン・ファン館で感じてみませんか。
今回取材させていただいたのは、宮城県慶長使節船ミュージアム「サン・ファン館」
所在地:
〒986-2135 宮城県石巻市渡波字大森30-2
電話番号:
0225-24-2210
開館時間:
9:30~16:30
※最終入館は閉館の30分前まで
※8月中は17:30まで延長開館
休館日:
毎週火曜日(祝日を除く)
年末年始
アクセス:
<電車・タクシー>
JR石巻線で「渡波駅」からタクシーで約5分
<車>
三陸自動車道「石巻河南I.C」から約30分
駐車場:
無料/乗用車約300台、大型バス可
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