目次
東北の秋は「芋煮会」
東北の秋といえば、紅葉、秋刀魚、そして「芋煮会」。
なかでも芋煮会は、宮城県と山形県で盛んに行われており、筆者をはじめ地元民にとっては日常生活の一部。
仙台市内の河川敷などで、毎年芋煮会を楽しんでいます。
また山形県では、毎年9月に「日本一の芋煮会フェスティバル」が開催されます。このように「芋煮会」は、東北民にとって毎年欠かせない秋の行事なのです。
「芋煮会フェスティバル」の味を手軽に再現できるセット!
産地: 山形県産
保存方法:要冷蔵
※里芋の産地について、9月~12月頃までは山形県産、それ以降は県外産(国産)の里芋となります。
芋煮会を知らない人もいる
しかしこの「芋煮会」。東北以外の地域では、あまり馴染みのない言葉みたいです。
「仙台の居酒屋で”芋煮会受付中”って見たんだけど、芋煮会って何なの?」と関東の方から聞かれました。
芋煮会とは? なんて深く考えたことはありません。
この機会に改めて、芋煮会のルーツや歴史を探りつつ、芋煮会を知らない人が抱く疑問を解決していきたいと思います。
芋煮会を知らない人が抱く疑問とは?
筆者や地元民にとって、芋煮会は毎年恒例のイベント。しかし芋煮会の「い」の字も出ない県からすると、「芋煮会って何?謎なんだけど。」と思うわけです。
そんな芋煮会をまったく知らない人が抱く、素朴な疑問にお答えしていきたいと思います。
芋煮会って、そもそもなに?


カンタンにいうと外で里芋を煮て食べる集まり。これが芋煮会です。




いいえ。その名の通り、芋煮会は芋が主役。芋といっても「里芋」です。バーベキューとは全くの別物ですよ。




里芋の収穫は地域によって異なりますが、10月頃が旬なのでこの時期に芋煮会が行われます。
また里芋は乾燥と寒さが苦手なので、収穫後すぐに食べるのが美味しいんですよ。




【まとめ】
芋煮会の主役は「里芋」。BBQではない。地域によって異なるが、10月中旬がオススメ。
東北のなかでも宮城と山形が盛んなんだ。県によって芋煮会の味は違うの?


同じ芋煮でも、地域によって名称も味付けもさまざま。宮城県と山形県は特に盛んですが、青森県を除く東北各地で行われています。
ザックリというと山形は牛肉の醤油味、宮城は豚肉の味噌味が多いですね。
では各県の代表的な芋煮の味付けを紹介しましょう。


宮城県(仙台市周辺)
・里芋と豚肉で味噌味(本来は仙台味噌)
山形県
・山形市周辺:里芋と牛肉で甘口の醤油
・山形県置賜地方:里芋と牛肉で醤油(隠し味に味噌を少々)
・山形県長井市:里芋と馬肉で塩(旨Sioいも煮)
・山形県最上地方:里芋と豚肉で醤油
・山形県庄内地方:里芋と豚肉で味噌
※山形県は内陸と沿岸で、芋煮の食材や調味料も異なる。
岩手県
・里芋と豚肉か鶏肉で、醤油か味噌
秋田県
・里芋と鶏肉で、醤油か味噌
福島県
・里芋と豚肉で味噌か醤油。きのこを入れる。
ちなみに青森県だと芋煮会という文化はなく、鍋といえば魚の鱈を入れる「じゃっぱ汁」が主流です。






それは禁句です。


どんな時に芋煮会するの?


お祝いやお祭り事と関連性はありません。里芋の収穫時期に誰かが「芋煮会やろう!」といえばはじまる、自由なイベントなんですよ。




【まとめ】
芋煮会は、誰かが「やろう」と言ったらはじまる。
どんな場所で芋煮会するの?


芋煮会は野外で行うのが本来の姿ですが、時代の流れとともに変化しているのが実情です。
居酒屋でも芋煮メニューがありますので、店内で芋煮会も可能ですね。
また2020年は新型コロナウイルスの影響を受け、”ドライブスルー芋煮”という新しいスタイルも誕生しました。



ドライブスルー芋煮!時代に沿って、芋煮会の形も変わってきているんですね。

そうですね。あとは野外で人が集まらずとも、もともと家庭の夕食で芋煮をつくりますし、定番料理といっても過言ではないです。家の庭などで芋煮会する方も多いですよ。



なるほど。場所を問わずに楽しめるのが、芋煮会なんですね。

ちなみに民間の大きな公園では、芋煮会用の設備が整っていたりしますよ。
もちろん公園によっては芋煮会禁止の場所もあるので、事前確認は必須です。
また秋になると、芋煮会セットのレンタルサービスをしている業者もあり、かなり忙しくなるそうです。手ぶらで芋煮会を楽しめて、さらに後片付けまでやってくれるので、まさに至れり尽くせり。
手軽に芋煮会を楽しめるようになってきましたね。




スーパーによっては、芋煮会用の鍋や調理用具のレンタルサービスを提供しています。
驚くかもしれませんが、芋煮会場に近いコンビニでは、芋煮会用の薪を店頭で販売したりするんですよ!




【まとめ】
芋煮会は、場所を問わない。家庭でも楽しめる。
芋煮会する意味って?


これも人それぞれですが、人とのコミュニケーションじゃないでしょうか。「飲みニケーション」と同じように「芋煮ケーション」ですね笑。
芋煮会を通じて、さまざまな人とのつながりができるので、貴重な情報が得られたりします。
さらにお互いの関係が良くなったり、絆が深まったり、一緒に何かを始めたりとか仲間意識や連帯感が強くなることもありますね。


一概にはいえませんが、さまざまな人たちとの交流によって自分自身の視野が広がることもあります。
そして、何よりもみんなと一緒に野外で食べると楽しいから美味しいんですよ。




【まとめ】
芋煮ケーションは、人とのつながりを強くしてくれる大切な文化。
芋煮会ってどんなことするの?どんな人たちとやるの?


うーん、ひたすら芋煮を食べますねぇ。地域によってさまざまですが、コレをやる!というのはありません。
芋煮を囲んでお酒を飲んでバーベキューしたり、ギターを弾いて歌ったり、よもやま話で盛り上がったり、春のお花見のように野外で宴会状態ですね。




家族、恋人、友人、知人、近所の人、地域交流、学校仲間、趣味仲間、職場や仕事関係など、いろんな人たちですね。


【まとめ】
芋煮会は、芋煮を食べればそれでいい。
芋煮以外は何か食べるの?芋煮ってどんな食材が入っているの?


お酒を飲む人は芋煮がメインですが、近くで秋刀魚や肉類を焼いて食べたりもしますね。
芋煮と一緒におにぎりを食べる人もいれば、締めに雑炊にしたりカレーうどんを入れたり…。



地域によって芋煮に使う肉と調味料が違うのはわかったんですが、ほかの具材はどうなんですか?

里芋と肉以外には、大根や白菜やこんにゃくなど入れたりします。とくにこれを入れる!という決まりはなく、自由に芋煮を楽しんでいますよ。
下記で各県や地域で使う食材をまとめてみました。参考までにどうぞ!


宮城県(仙台市周辺)
・ネギ、人参、大根、こんにゃく、ごぼう、白菜、きのこ類、豆腐
山形県
・山形市周辺:ねぎ、こんにゃく
・山形県置賜地方:人参、大根、糸こんにゃく
・山形県長井市:玉こんにゃく、大根、人参、木耳(にら、水菜、ねぎ、菊をトッピング)
・山形県最上地方:ねぎ、きのこ類
・山形県庄内地方:ねぎ、きのこ類、厚揚げ
岩手県
・ねぎ、大根、ごぼう、豆腐、こんにゃく、きのこ類多め
秋田県
・ねぎ、ごぼう、こんにゃく、油揚げ、きのこ類、せり
福島県
・ねぎ、大根、人参、ごぼう、こんにゃく、豆腐、きのこ類
「うちじゃコレは入れない」「うちはアレを必ず入れる」という声もあると思いますが、芋煮は自由です。
入れる食材は、特に決まりはありません。地域や家庭によって食材もさまざまなんですよ。




【まとめ】
芋煮会は、人ぞれぞれ。
芋煮会の発祥ってどこなの?
山形県※中山町の資料によりますと、山形県の中山町長崎地区が”芋煮会発祥の地”とされています。
※中山町(なかやままち)…山形県東村山郡中山町。最上川沿いに広がる町で、山形県の中央部に位置する。山形市から車で約24分。
元祖芋煮は里芋と棒鱈だった!
今からさかのぼること、350年以上前の江戸時代。
最上川舟運(もがみがわしゅううん)の終点である中山町長崎に、京都から※北前船(きたまえぶね)がやってきます。
山形名産の※青苧(あおそ)を仕入れるためにやってきたものの、なかなか内陸部から青苧が届きません。
青苧が届くまでの間、京都の船頭たちは近所の畑から買ってきた里芋(さといも)と、積み荷の棒鱈(ぼうだら)を鍋に入れて煮込みはじめたのです。
この煮込み鍋が、芋煮会のはじまりとされています。
船頭たちは鍋を囲んで酒を酌み交わし、楽しく時間をつぶしたとか。
つまり芋煮は京都の人が山形でつくった、ということになります。
中山町長崎は江戸時代の元禄6年(1693)まで、※最上川舟運の終着港として賑わっていました。したがって芋煮会は、1693年以前に行われていたと考えられています(諸説あります)。
そう考えると、芋煮会は350年以上の長い歴史をもつ食文化なんですね。
※青苧…繊維の素材となる植物
※北前船……航行する船主自体が商品を買い、それを売買することで利益を上げる船のこと。対馬海流に抗して、北陸以北の日本海沿岸諸港から下関を経由し、瀬戸内海の大坂に向かう航路を通った。
※最上川舟運(もがみがわしゅううん)…舟運とは舟による交通や輸送のこと。出羽山形藩初代藩主・最上義光(政宗の叔父)が、酒田と山形を水運で結ぶ為に「最上川の三難所」を開削して舟運の円滑化を図った。
最上川の三難所とは、村山市にある「碁点」「三ヶ瀬」「隼の瀬」の3地点。
この最上川の河道整備により、水運は発達し各所に船着場が建設された。
芋煮の鍋を掛けていた、松の木がある
当時、船頭たちが芋煮の鍋を掛けるのに使ったと伝えられているのが鍋掛松(なべかけまつ)で、大正6年(1917)まで残っていたそうです。現存する鍋掛松は5代目。
【鍋掛松の基本情報】
所在地:
〒990-0402 山形県東村山郡中山町いずみ1番地 ひまわり温泉ゆ.ら.ら地内
アクセス:
<車>
山形自動車道 寒河江I.Cから約7分
<電車>
JR左沢線 陸前長崎駅から徒歩で約16分
駐車場:
無料/約130台
地域によって違う「芋煮」の味
芋煮の元祖食材は棒鱈とされていますが、時の流れともに食材は変化していきます。
棒鱈、クジラ肉、豚肉、鶏肉、牛肉へと変化し、南東北(宮城県・山形県・福島県)全体に広がりました。
現在では各県や地域によって、使用する食材や味付けが異なります。
そのため芋煮会シーズンになると、SNS上を中心にこんなイベントが発生することも……。
互いの愛をぶつけ合う、芋煮戦争が起こる
9~10月頃になると、SNS上で「#芋煮戦争」が勃発します。某TV番組にも取り上げられ、県民以外にも知られるようになりました。
「芋煮といえば、豚肉に味噌だろ!」
「それじゃ〇汁じゃん。芋煮は牛肉に醤油で決まりでしょ!」
「まぁどっちも食べるけどね笑」
とまぁ、こんな感じで。どんな味付けや食材にせよ、「芋煮が好き」という気持ちは皆同じということがよくわかります。
芋煮愛が深いゆえに、このような戦争(イベント)が起こるのも東北ならではの魅力です。
日本三大芋煮ってご存じ?
日本三大芋煮とは、山形県中山町の「棒鱈煮」、島根県津和野町の「芋煮」、愛媛県大洲市の「いもたき」のこと。
平成26年(2014)JR東日本が出資している交通新聞社が発行した「旅の手帖」に、この3つの市町を”日本三大芋煮”と記されたのがキッカケとなりました。
これを機に、3つの市町が連携しそれぞれの芋煮をPRするイベントや情報を発信しています。
呼び名は違えど、東北だけでなく九州や四国でもその地ならではの芋煮会が行われているんですね。
芋煮会は、みんなが笑顔になる魔法の会
東北の秋の風物詩「芋煮会」。各地で味や食材の違いや好みはありますが、芋煮会はみんなが笑顔になる魔法の集まりです。
芋煮のつくり方はとてもシンプルでカンタンなので、肌寒くなる秋には最適の料理です。あなたも芋煮で身も心もホッとしてみませんか。
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