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登米ってどんなところ?
宮城県北東部に位置する登米市は、2005年の合併で誕生した市で「とめし」と読みます。
今回ご紹介するのは、市内にある旧登米町。「とよま」と読み、”みやぎ明治村”という名で観光地化されています。
登米町は城下町だった
江戸時代の登米町は、仙台藩登米伊達家が治める二万一千石の城下町として栄えたため、歴史的な建造物や伝承芸能が今も数多く残されています。
明治になると、廃藩置県により「藩」は廃止。現在の宮城県となるまで「登米県(とめけん)」「水沢県」と県域が変わり、一時期登米町は登米県の県庁所在になりました。
町には明治時代の面影を残す建築物も残っており、国の重要文化財に指定されている「教育史料館(旧登米高等尋常小学校)」や「警察史料館」などが有名です。
2021年度放送予定の、NHK朝の連続テレビ小説「おかえりモネ」のロケ地にもなっています。
観光名所が一点に集中しているため、車いらずで観光できます。また「水沢県庁記念館」にはレンタルサイクル(有料)がありますよ!
仙台から高速バスが出ている!
そんな登米町へのアクセス方法は、車もしくは高速バスになります。
<高速バス>
県庁市役所前または仙台駅前(さくら野百貨店前)から、東日本急行の高速乗合バス「とよま総合支所行」に乗車し約90分、「とよま明治村」下車。片道1,250円。
<車>
三陸自動車道 登米インターから約4分。
・「とよま観光物産センター駐車場」無料/普通車51台、大型バス7台
・「交通公園駐車場」(髙倉勝子美術館の隣)無料/普通車、大型バス
次のページから、いよいよモデルコースのご紹介です!
【8:06】みやぎ明治村に到着!
今回は始発の高速バスを利用したため、8時ちょっと過ぎに登米町に着きました。施設やお店が開く9時まで少し時間が空きます。
そんなスキマ時間を利用して巡りたい、登米の名所をご紹介します。
寺池館跡(寺池城跡)
中世の登米町は、葛西氏(かさいし)の領地でした。葛西氏とは、鎌倉幕府を開いた源頼朝(みなもとのよりとも)の奥州藤原氏討伐に従軍し、※奥州総奉行を任じられた一族です。
寺池館(てらいけたて)の築城年代は不明ですが、葛西氏によって築城されたと考えられています。
戦国時代の葛西氏は、奥羽の有力な戦国大名となりますが、豊臣秀吉による※奥州仕置により領地を没収され、大名としての葛西氏は滅亡。
新領主となった秀吉の家臣・木村氏(きむらし)が、寺池館に居城します。
※奥州総奉行(おうしゅうそうぶぎょう)…奥州藤原氏滅亡後の戦後処理のために、源頼朝が任じた臨時職。初代当主・葛西清重(かさい きよしげ)が任じられた。
※奥州仕置(おうしゅうしおき)…奥羽地方の戦国大名に対し、豊臣秀吉が行った領土の没収などによる仕置き。
■政宗の家臣・白石宗直が、城主となり初代登米伊達氏となる
しかし木村氏のやり方に不満を抱いた葛西氏・大崎氏の旧家臣や領民らが、天正18年(1590年)に一揆を起こします(葛西・大崎一揆)。
秀吉から命を受けた伊達政宗が、この一揆を制圧。
報酬として秀吉から旧葛西氏の領地を与えられた政宗は、家臣の白石宗直(しろいし むねなお)に統治を任せました。
寺池館に居城した宗直は、その後の戦でも武功を上げ、政宗から「伊達性」を名乗ること許されます。
こうして”登米伊達氏”が誕生し、幕末までの13代265年間、仙台藩21要害の一つとされてきました。
明治維新後に建物は取り壊され、跡地となった現在は公園として整備されています。バス停や駐車場からも近いので、散策がてら寄り道してみては?
登米神社
1064年にさかのぼる、古い歴史をもつ「登米神社」。バス停から徒歩7分と、少し離れた場所にあります。
源頼経(みなもとの よりつね)が鏃(ヤジリ)を神体して戦勝祈願した地に、嫡子の義家(よしいえ)が「岩清水八幡宮(いわしみずはちまんぐう/京都府八幡市)」を※勧請分遷したのが、はじまりのようです。
登米伊達氏の守護神として祀られた八幡宮が、「登米神社」に改められ現在にいたります。
※勧請……分霊を他の神社に移すこと。
この階段を上った先に拝殿があります。
ご祭神は、第15代天皇・応神天皇(おうじんてんのう)。
地元では「はちまん様」として親しまれており、毎年4月20日、9月15日には町を挙げて盛大な祭典が行われるそうです。
北上川
神社から5分ほど歩くと、北上川の土手に出ます。
明治時代前半まで、登米町は北上川を利用した舟運の拠点として栄えていました。
近隣で収穫された米などを登米に集め、船を利用し石巻まで運び出されたようです。
それにしても…雄大な川だなぁ。
【9:00】共通券を買おう!
登米観光に便利なのが、「6施設共通観覧券」。町内にある6つの観光名所に入れる、おトクで便利な券です。
今回はこの共通券を使って、登米町を満喫するモデルコースをご紹介します。
<共通券で入れる6施設>
① 明治21年に建てられた、洋風学校。国の重要文化財である「教育史料館」
② 明治の取り調べ所、留置所の復元やパトカーに乗れる「警察史料館」
③ 武具や刀剣など登米伊達氏の遺物を展示する「登米懐古館」。
④ 明治から昭和にかけて、裁判所として使われた「水沢県庁記念館」。
⑤ 登米の伝統芸能を伝える「伝統芸能伝承館 森舞台」
⑥ 登米出身の日本画家・高倉勝子の作品を展示する「高倉勝子美術館」
共通券は「とよま観光物産センター 遠山之里」もしくは各施設で購入可能です。
<共通券の料金>
【9:05】教育史料館(旧登米高等尋常小学校)
まずは「とよま観光物産センター 遠山之里」のすぐ隣にある「教育史料館」へ。
現在は教育史料館という名称になっていますが、もとは「旧登米高等尋常(じんじょう)小学校」です。
尋常小学校は明治21年(1888)に建てられ、昭和48年まで使われていました。明治の洋風学校を代表する建築物として、国の重要文化財に指定されています。
校舎は純木造の2階建てで、南を正面にコの字型をとっています。
洋風の中に部分的に和風の技法を取り入れた、和洋折衷のハイカラな外観です。
とくに2階の白いバルコニーは特徴的で、柱にはギリシャ風の彫刻が施されています。
ちなみにこの巻き模様、「長生きするように」とのおまじないだそうです。
校舎は1階、2階とも吹き抜け。
教室内に光を入れるため、なんと両側にガラス窓を贅沢に使用しています。
しかも! この窓ガラスは明治21年の建設当時に輸入されたものです。現在の窓ガラスとは違い、ゆがんだ上に気泡や線が入っています。
また当時の授業などを、マネキンで表現した”再現教室”も見どころの1つ。身に着けている衣服、机上に開かれた教科書など、じっくり観察してみてください。
他にも明治~昭和の教科書、教材、器具などが展示されていたり、企画展も開催されています。
イカラに変身!?着付け体験※要予約※2020年12月現在「中止」
「教育資料館」では、4~11月のシーズン中にハイカラさんの着付け体験を実施しています。もちろん町歩きも可能です。
※7月~8月は夏季仕様でないため休止。
※不定期実施のため、必ず事前に電話で問い合わせてください。
またみやぎ明治村はコスプレーヤーの聖地を目指しており、事前に予約すれば館内での撮影もOK。
着付け体験とコスプレイヤーに関しては、下記の「みやぎ明治村」公式をご確認ください。
<教育史料館>
開館時間:
(平日)9:00~16:30
(土日祝)9:00~16:00
休館日:
12月31日~1月1日
料金:
一般400円、高校生300円、小・中学生200円
【10:00】武家屋敷「春蘭亭」
教育史料館を後にし、武家屋敷通りへ(教育史料館から徒歩約2分)。
こちらは慶長9年(1604)、登米伊達初代藩主・白石直宗がに岩手県の水沢から登米に移る際、ともに移住してきた鈴木家の屋敷です。
現在は観光のお休処「春蘭亭(しゅんらんてい)」として、無料開放されています。
こちらが入口。靴を脱いで、お座敷にあがりましょう。
奥へ進むと囲炉裏があります。あったかい~
休憩できるだけでなく、この地に自生する春蘭の花を加工した”春蘭茶”や、抹茶などをいただけます。
写真は春蘭茶セット(500円)。お茶と季節のお菓子がついています。春蘭茶単品だと300円。ほかにもコーヒーや甘酒、登米産りんごジュースなどがあります。
<春蘭亭>
開館時間:
9:00~16:30
カフェ営業時間:
10:00~15:30
休館日:
12月28日~1月4日
料金:
無料
【10:50】「登米懐古館」で登米伊達氏を知る
春蘭亭のすぐ隣にある「登米懐古館(とよまかいこかん)」。登米伊達家ゆかりの鎧や兜、刀剣、絵画などが展示されています。
とくに伊達政宗の家臣・白石宗実(しろいし むねざね)の公着用の甲冑は必見です。宗実は白石直宗の養父にあたる人物で、水沢1万5千石を治めていました。
東京オリンピック2020の国立競技場で知られる、建築家・隈研吾氏(くま けんごし)の設計により令和元年に移転しました。
<登米懐古館>
開館時間:
9:00~16:30
休館日:
12月28日~1月4日
料金:
一般400円、高校生300円、小・中学生200円
【11:30】水沢県庁記念館
春蘭亭の向かいにある「水沢県庁記念館(みずさわけんちょうきねんかん)」。
明治4年、現在の宮城県北部と岩手県南部を管轄する地域を「登米県」と定めた時期があり、登米町に県庁舎が設置されることになりました。
明治5年に水沢県庁舎として落成。しかし明治8年に県庁舎は一関へ移転することになり、水沢県庁の役名を終えます。
その後、水沢県庁舎は小学校や治安裁判所などに利用されました。
当時の建物を保存するために、保存修理を行い明治22年の治安裁判所時代の姿に復元。平成3年から水沢県庁記念館として公開されています。
【12:00】登米名物を食べに行こう!
待ちに待ったランチライム! せっかくなので登米名物「油麩丼」を食べようと思います。向かったのは「とよま観光物産センター 遠山之里」のすぐ近くにある「大衆食堂 つか勇」。
登米市名物の油麩丼(あぶらふどん)。油麩とは、小麦粉のたんぱく質成分グルテンを植物油で揚げた麩のこと。
甘じょっぱいだし汁のしみ込んだ油麩を半熟の卵でとじ、ホカホカご飯の上にのせています。
はっとは、小麦粉を水で練り熟成されたものを、薄くのばして茹で上げたもの。食感的には、餃子の皮に近いです。具の中に油麩が入っているのは、登米町ならでは。
「大衆食堂 つか勇」以外にも、油麩丼をいただけるお店はたくさんあります。詳しくは登米市の公式HPをチェックしてみてください!
【13:00】警察史料館(登米警察署)
明治22年(1889)に建てられた「登米警察署」。昭和43年まで利用され、現在は国内唯一の「警察史料館」として開放されています。
冒頭で紹介した「教育史料館」と同様、宮城県の技手・山添喜三郎氏(やまぞえ きさぶろう)が設計を担当。和と洋を取り混ぜた美しい外観は、当時とほとんど変わらない形で保存されています。
たとえば、館内2階に上がるこの階段。中央部分が凹(へこ)んでみえますよね?
昔の警察官は革靴の底にビョウがうってあったため、このように凹んだ状態になっているそうです。
こちらは調所(しらべじょ)。容疑者を取り調べた部屋で、調査官は上段に、容疑者は下段に座りました。
↑こちらは調所の錦絵。
こちらは留置所。明治22年建築当時のままを復元したもので、複数人が収容された雑居房(ざっきょぼう)でした。
中に入ると四角い石がありますが、それが当時のトイレのようで下には瓶が埋まっているんだとか。トイレは建設当時からのものだそうです。
子供も喜びそうな「ふれあいコーナー」。昭和55年に配備されたパトカーや白バイが展示されており、実際にパトカーへ乗車したり、サイレンを鳴らせたりします。
<警察史料館>
開館時間:
9:00~16:30
休館日:
12月28日~1月4日
料金:
一般300円、高校生200円、小・中学生150円
【13:40】登米市高倉勝子美術館「桜子路」
警察史料館から再び「とよま観光物産センター 遠山之里」の方へ戻り、登米町出身の日本画家・高倉勝子(たかくらかつこ/1921~2015)の作品を展示している美術館へ。
みちのくの人々の古き良き暮らしを※岩絵具や水墨で表現した絵、自身の被爆体験を描いた「原爆の図」などがあります。
太平洋戦争中、高倉先生は登米町から広島へ移住し原爆を体験。文章と力強い絵で、目の当たりにした原爆の悲惨さを後世に伝えています。
※岩絵具…主に鉱石を砕いてつくられた粒子状の日本画絵具。
<登米市高倉勝子美術館「桜子路」>
開館時間:
9:00~16:30
休館日:
12月28日~1月4日
料金:
一般200円、高校生150円、小・中学生100円
【14:30】伝統芸能伝承館「森舞台」
江戸時代から登米町に伝わる”登米能”をはじめ、”岡谷地南部神楽”や”とやま囃子”など数々の伝承芸能が今もなお残されています。
そんな伝統芸能を伝えていくために設立されたのが、「伝統芸能伝承館 森舞台」です。
本格的な能舞台がそなえており、こちらも隈研吾氏が設計しました。舞台正面の鏡板は、日本画家・千住博氏が手がけています。
また能舞台や登米能に関する資料が展示されており、登米の伝統芸能に深く触れられる施設です。
毎年6月に行われる新緑薪能と、演目を変えて9月に催される「とよま秋まつり」の宵祭りで、登米能が上演されます。開催日時や前売り券に関しては、「とよま観光物産センター 遠山之里」へ問合せてください。
<伝統芸能伝承館「森舞台」>
開館時間:
9:00~16:30
休館日:
12月28日~1月4日
料金:
一般200円、高校生150円、小・中学生100円
【15:00】「とよま観光物産センター 遠山之里」でお土産を買おう!
共通券の6施設をすべてめぐった後は、お土産を買いにいきましょう!
「とよま観光物産センター 遠山之里」では、油麩やはっとなど地元の特産品や土産物を販売。高速バスの乗車券も購入できます。
バスは15:20。遠山之里から乗り場までは徒歩2,3分ですが、これを逃すと次は18時台になってしまうので、時間にご注意ください!
よゆうがあれば「くすりと度量衡のアンティーク資料館」へ!
明治27(1894)年に創業、現在も営業している「伊新薬局」に併設されている資料館。築100年ほどの土蔵には、明治時代~現在までの薬の金看板、ポスター、人形などが、なかなかお目にかかれない貴重品が展示されています。
<くすりと度量衡のアンティーク資料館>
開館時間:
9:00~17:00
休館日:
なし(臨時閉館あり)
料金:
大人200円
小腹がすいたら…?
たい焼き cafe Genkitai
高速バス乗り場のすぐ近くにある、たいやき屋さんです。あんこ、大豆あん、カスタード、たまご(イートインのみ)、チーズ(イートインのみ)など、種類も豊富!
テイクアウトはもちろん、店内でもいただけます。
とよまだんご
武家屋敷通りに店を構える「とよまだんご」。みたらしだんご、あんこだんご、ごまだんご、ずんだだんご、五色、六色だんごなど、種類は豊富。1本110円~。
テイクアウトはもちろん、店内でもいただけます。
1泊して登米市を満喫しよう!
町内にはお財布に優し価格で宿泊できる旅館や民宿、ビジネスホテルがあります。ぜひチェックしてみてください!
江戸と明治、2つの時代が交差する町
江戸時代と明治時代、2つの時代が同居するなんとも不思議な町。観光名所を中心にご紹介しましたが、町中の景色も要注目!
写真上の路地は、”武者隠し”と呼ばれるもの。建物正面が、のこぎりの歯のようにジグザク並んでいます。
これは敵が攻めてきたとき、鉄砲をもつ足軽が各家の角々に隠れ、敵を待ち伏せるために利用したそうです。こういった面影が各所でみられるのも、登米ならではの魅力ですね。