400年にわたる富谷宿の歴史
江戸時代初期の1618年(元和4)。奥州街道の整備が進み、街道を往来する大名や旅人のため新たな宿場が必要となりました。
そこで仙台藩祖・伊達政宗公は、元鶴巣城主(宮城県黒川郡大和町)・黒川氏の家老だった内ヶ崎筑後(のちの織部)に、宿場の開設を命じます。
当時、この地区の戸数は13戸ほどしかなかったようですが、織部の尽力もあり、2年後の1620年(元和6)には倍になったようです。
そして、伊達政宗の黒印状をもって「富谷宿」が誕生しました。
1842年(天保13)の記録では、街道沿いに「宿屋」「呉服屋」「酒屋」「醤油屋」といった店が70軒以上も軒を連ねていた、と残されています。
仙台城城下以北の大名が宿泊した
仙台以北の奥州街道では、2番目の宿場となった富谷宿。
仙台城城下以北を治める、松前(松前氏)、弘前(津軽氏)、黒石(津軽氏)、八戸(南部氏)、盛盛岡(南部氏)、一ノ関(田村氏)の諸藩が、富谷新町宿を利用しました。
お茶の名産地だった
かつて、この一帯はお茶の産地として知られ、1751年の盛岡藩の記録には「富谷宿の名物はお茶である」との記載が残されています。
富谷茶の栽培は1970(昭和45)で途絶えていました。しかし2020年(令和2)、公益社団法人 富谷市シルバー人材センターが「富谷茶復活プロジェクト」を発足させ、現在「富谷茶」の復活を目指しています。
前置きが長くなってしまいましたが、さっそく富谷新町の「しんまち通り」を歩いてみたいと思います。
奥州街道 宿場町とみや「しんまちめぐり」
しんまちめぐり第二駐車場
こちらが「しんまちめぐり」専用の第二駐車場。
駐車可能台数は7台です(無料)。満車の場合は「とみやど」の近くにある第一駐車場を利用してください。
取材日は、紅葉シーズン真っ盛りの11月!
14時頃の訪問で、気温16℃で天候は秋晴れという絶好のコンディションです。
内ヶ崎別邸庭園
駐車場のすぐとなりにあるのが、「内ヶ崎別邸庭園」です。
明治中期に内ヶ崎総本家の分家にあたる、初代内ヶ崎文之助によって建てられました。
一般開放はされていません。敷地面積は3,500平方メートル(約1,058坪)もあるそうで、邸宅内には回遊式庭園が残っているそう。
脇本陣跡
駐車場から道なりに進むと、左手に「脇本陣跡」が姿を現します。
脇本陣跡は本陣に次いで、格式の高さを求められたとされており、盛岡藩や松前藩、八戸藩の常宿だったそうです。
また1876年(明治9)と1881年(明治14)に、明治天皇が東北北海道行幸の際に御小休された部屋が、今も残されています(現在は公開されていません)。
旧佐忠商店(冨谷宿)
脇本陣を進んで行くと、右手に趣のある建物がみえてきます。「冨谷宿(とみやじゅく)」です。
冨谷宿は、江戸時代後期の1843年(天保14)に呉服屋として創業し(旧佐忠商店)、現在はしんまちの資料館・地場産品販売所として営業しています。
旧佐忠商店(冨谷宿)の店舗及び主屋、門は、2021年(令和3)に国の有形文化財に登録されました。
内ヶ崎酒造店(本陣跡)
冨谷宿より先に進むと、右手の並びにみえてくる「内ヶ崎酒造店(本陣跡)」。本陣とは、参勤交代の時に大名が泊まる宿泊所のことです。
1618年(元和4)伊達政宗より命ぜられた宿場の開設後、内ヶ崎本家は代々にわたって本陣を務めてきました。
酒造業は1661年(寛文元年)の創業で、内ヶ崎酒造店は宮城県最古の酒蔵となっています。
中宿
内ヶ崎酒造店(本陣跡)から熊野神社まで続く地域が、中宿(なかじゅく)です。中宿とは、旅の途中に休息または宿泊する施設のこと。
中宿周辺の街道沿いは、今も江戸時代の宿場町らしい景観をみることができます。
恋路の坂
中宿から「とみやど」を過ぎた左手にあるのが、「恋路の坂(こいじのさか)」です。
アインシュタインの弟子で東北帝国大学(現在の東北大学)助教授だった石原 純氏と、歌人の原 阿佐緒(はら あさお)氏の2人が歩いたとされる坂道。
2人の恋にちなんで名付けられた坂ですが、なんと当時の石原氏は妻子持ちだったとか。そのためこの2人の恋愛は、大問題に発展したそうです。
毘沙門堂
恋路の坂を上がっていくと、「毘沙門堂(びしゃもんどう)」の入口の案内板が立っていました。
そのまま小高い山を登っていくと、毘沙門堂がみえてきます。
このお堂の勧請年月は、明らかにされていません。
しかし1774年(安永3)の風土記御用書出によると、
「御本尊は2尺6寸(約78㎝)の木仏立像で行基菩薩の作」
と記載されているようです。少なくとも、江戸時代にはすでに建立されていたと考えられます。
次はしんまち通りのメイン、「富谷宿観光交流ステーション(とみやど)」に行ってみましょう!
富谷宿観光交流ステーション(とみやど)
先ほどご紹介した「内ヶ崎酒造店(本陣跡)」のちょうど向かい側にあるのが、「富谷宿観光交流ステーション(とみやど)」です。
もともと内ヶ崎醤油店だった跡地を活用し、富谷市が整備した観光施設。観光交流の拠点ならびに起業や創業などによって地域経済の活性化を目的に、2021年(令和3)5月15日にオープンしました。
富谷市が当初の目標としていた年間来場者数10万人に、わずか5カ月で到達したという人気の施設です。さっそく施設内に入ってみましょう。