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宮城県の伊達政宗公騎馬像をさがす
「伊達政宗公騎馬像」と聞いて、まっ先に浮かぶのは仙台城跡にある騎馬像ではないでしょうか。しかし実は、仙台城跡以外にも伊達政宗公の騎馬像が存在します。
では他の騎馬像は、いったいどこにあるのでしょうか? 今回は伊達政宗公の騎馬像をさがす旅に出かけてみました。この記事で紹介しているのは、全7ヵ所です。
① 仙台城跡2代目・伊達政宗公騎馬像 / 仙台城(仙台市)
まずはお馴染み、仙台城跡にある伊達政宗公騎馬像。仙台城跡の騎馬像としては2代目、伊達政宗公の像としては3代目にあたり、昭和39年(1964)に設置されました。
初代騎馬像の制作者である小室達(こむろ とおる)氏の生まれ故郷、柴田町に保管されていた初代騎馬像の石膏原型をもとに復元され、現在にいたります。
政宗公の生涯を描いた、台座のレリーフに注目!
騎馬像は、台座を含め高さ約9.2m。台座には4枚のレリーフがあり、元服、朝鮮出兵、支倉常長の見送り、従三位権中納言の官位と、4期にわけて政宗公の生涯が描かれています。
政宗公が乗っているのは、愛馬の”五島(ごとう)”。余談ですが、仙台駅から徒歩15分のところに、五島を祀った「馬上蠣崎神社(うばがみかきざきじんじゃ)」があるので、ぜひお立ち寄りを。
騎馬像がある公園は24時間開放されており、日没から23時まで騎馬像と本丸北壁石垣がライトアップされています。
■仙台城跡の基本情報】
所在地:
〒980-0862 仙台市青葉区川内1
アクセス:
<バス>
仙台駅西口バスプール16番乗場よりるーぷる仙台に乗車し約22分、「仙台城跡」下車徒歩約3分
<地下鉄>
仙台駅から地下鉄東西線「八木山動物公園行」に乗車し約5分、「国際センター駅」下車徒歩約20分
<車>
東北自動車道 仙台宮城I.Cから約12分
駐車場:
有料/150台
最初の1時間まで500円、30分ごとに200円(18時以降無料)
② 初代仙台城跡・伊達政宗公騎馬像 / 仙台市博物館(仙台市)
こちらは先ほどご紹介した仙台城跡にある伊達政宗公騎馬像の「初代」です。騎馬像から胸像へと姿を変え、現在「仙台市博物館」の館庭に展示されています。
ではなぜ、騎馬像から胸像となってしまったのでしょうか?
仙台城跡の初代騎馬像は、昭和10年(1935)伊達政宗公生誕300年を記念し、宮城県青年団によって仙台城跡に設置されました。
制作者は柴田町出身の彫刻家・小室達(こむろ とおる)氏。昭和6年(1931)に※総経費42,550円で建設が進められ、高さ3.4m、重さ4.5tという巨大な像が完成しました。
しかし太平洋戦争が激化し、日本は金属不足に陥ります。国の金属類回収令により、騎馬像は昭和19年(1944)に撤去され、仙台城跡から姿を消してしまうのです。
台座にある4枚のレリーフもすべて供出され、騎馬像とともに出陣となりました。
戦後、奇跡的に発見された伊達政宗公
ところが戦後の昭和20年(1945)、郷土史家の石川謙吾(いしかわ けんご)氏が、塩釜市の東北ドッグ敷地内にある金属集積所から騎馬像を発見。
このとき騎馬像は、バラバラに分解されていたものの各部分は揃っており、溶かされてはいなかったのです。
石川氏は騎馬像を回収すべく、寄付金集めに奔走します。しかし戦後まもない混乱期のため、なかなかお金は集まりません。
翌年昭和21年(1946)、石川氏のもとに集積所から騎馬像を処分するという連絡が入ります。
慌てて集積所に向かったところ、バラバラながらも各部分は残っていた騎馬像は、上半身のみを残し姿を消していました。
しかし上半身は大切に保管されていたそうで、集積所の担当者も、恐れ多くて政宗公の顔は溶かせなかったのかもしれませんね。
石川氏は私費を投じ、この上半身を鉄くずとして1,700円で購入。その後有志とともに、青葉神社へ奉納しました。
そして昭和36年(1961)「仙台市博物館」開館の際に、胸像は青葉神社から博物館に寄贈され、現在にいたります。
■仙台市博物館の基本情報
所在地:
〒980-0862 宮城県仙台市青葉区川内26
アクセス:
<バス>
仙台駅西口バスプール16番乗場より「るーぷる仙台」に乗車し約20分、「博物館・国際センター前」下車し徒歩3分
<地下鉄>
地下鉄東西線「仙台駅」から八木山動物公園行きに乗車し約5分、「国際センター駅」下車し南1出口から徒歩約8分
<車>
東北自動車道 仙台宮城I.Cから車で約10分
駐車場:
無料/普通車50台、バス5台
③ 騎馬像じゃない!仙台城跡にあった伊達政宗公平和像 / 岩出山城跡(大崎市)
現在「仙台城跡」にある伊達政宗公の像は、騎馬像としては2代目、ですが政宗公の像としては3代目にあたります。
というのも、仙台城跡2代目にあたる伊達政宗公の像は、騎馬像ではなく「伊達政宗公平和像」だったのです。
伊達政宗公平和像が設置されていたのは、昭和28年(1953)~昭和37年(1962)まで。小野田セメントが材料を無償で提供し、彫刻家の柳原義達(やなぎはら よしたつ)氏が制作しました。
立像で白いコンクリート製という、騎馬像とはまるで異なった容姿をしています。
平和を願う伊達政宗公
このお姿には理由があり、戦後アメリカ軍が拠点とした仙台城跡地で、戦争を思い浮かべないように扇子を持った裃姿(かみしもすがた)の政宗公像がつくられました。
現在は大崎市の「岩出山城跡」に移設されており、誰でも自由に見学できます。
ぜひ下記記事もご覧ください!
■岩出山城跡の基本情報
所在地:
〒989-6437 宮城県大崎市岩出山城山
アクセス:
<電車>
JR仙台駅からJR東北本線「小牛田行」に乗車し約45分「小牛田駅」で下車。
「小牛田駅」からJR陸羽東線「鳴子温泉行」に乗車し約45分、「有備館駅」下車し徒歩約13分。
<車>
東北自動車道 古川I.Cから車で約15分
駐車場:
無料/普通車20台
④ 間近でみられる伊達政宗公騎馬像 / 柴田町農村環境改善センター(柴田町)
昭和62年(1987)。この年は大河ドラマ「独眼竜政宗」が放映され、日本中に政宗ブームが巻き起こりました。
「梵天丸もかくありたい」が流行語となり、政宗公ゆかりの仙台には多くの観光客が訪れたそうです。
仙台城跡まで行かずとも政宗公に会えるようにと、仙台市、仙台市観光協会、独眼竜政宗仙台協議会によって設置されたのが、こちらの仙台駅「初代」伊達政宗公騎馬像です。
騎馬像は高さ3.1m、重さ500kg、材質は強化プラスチック製。仙台城跡にある初代騎馬像の石膏原型をもとに、3/4のサイズでつくられています。
騎馬像は、昭和62年1月11日から翌年のゴールデンウイークまで、仙台駅ステンドグラス前に設置されました。
騎馬像の隅々まで、じっくり観賞できる
仙台駅での設置期間は、当初1年間の予定だったそうです。
しかしあまりの人気に、翌年昭和63年(1988)のゴールデンウィークまで展示期間を延長したとか…。
その後は、制作者である小室達氏の故郷、柴田町入間田(いりまた)にある「農村環境改善センター」に設置され、現在にいたります。
騎馬像は1階のホールに設置されており、間近で観賞することができます。2階へ続く階段からは、政宗公の愛馬「五島」の顔正面や政宗公の兜の上など、仙台城跡の騎馬像だとみえない部分もしっかり観察できるのがいいですね!
館内見学は無料ですが、職員の方に声をかけてから入りましょう。この日筆者は晴れたお昼時に訪問したのですが、写真のような逆光になってしまいました。写真撮影は午後か曇りの日がいいかもしれませんね。
■柴田町農村環境改善センターの基本情報
所在地:
〒989-1745
宮城県柴田郡柴田町大字入間田字外の馬場220
開館時間:
9:00~17:00
休館日:
- 毎週月曜日(休日の場合は翌日)
日曜日および祝日は貸館等の利用がない場合は閉館
アクセス:
<電車・タクシー>
仙台駅から東北本線「白石行き」に乗車し約26分、「槻木駅」下車タクシーで約10分
<車>
仙台東部道路 岩沼I.Cから約20分
駐車場:
無料
⑤ 20代の伊達政宗公騎馬像 / 有備館駅(岩出山町)
こちらはJR陸羽東線 「有備館駅」前にある、伊達政宗公の騎馬像です。もともと地元銀行の広告として、平成元年(1989)に仙台駅に設置されました(仙台駅騎馬像としては2代目)。
デザインは美術家の松尾ルミ子氏、制作は彫刻家の神吉善也氏が担当。騎馬像の高さは3.7mで、材質は強化プラスチック製です。
20代の政宗公をイメージしたそうで、そのとおり直線的で凛々しい若者という印象を抱きました。
「じゃあ今日6時”伊達前”集合ね!」
初代の設置期間は約1年半でしたが、2代目は20年にわたり仙台駅に設置されました。
当時の騎馬像は「伊達前」と呼ばれ、待ち合わせ場所の定番スポットになっていたそうです。時間に合わせて色のライティングが行われたほか、時間とともに光の当たる角度や、影が変化する仕掛けが施されていたとか。
その後、平成20年(2008)のJR宮城デスティネーションキャンペーンによる駅改修のため、騎馬像はJR東日本仙台支社から大崎市に譲渡され、現在の大崎市岩出山町の「有備館駅」に移設されました。
岩出山町といえば、仙台城が完成するまでの間、政宗公が居城を構えていた場所です。
「岩出山城(いわでやまじょう)跡」や、岩出山伊達家の子弟らが過ごした学び舎「有備館(ゆうびかん)」があり、伊達家ゆかりの土地でもあります。ぜひ下記記事もご覧ください!
■有備館駅の基本情報
所在地:
〒989-6433 宮城県大崎市岩出山上川原町
アクセス:
<電車>
仙台駅から東北本線「小牛田行」に乗車し約44分、「小牛田行」下車し、JR陸羽東線「鳴子温泉行」に乗り換え約61分、「有備館駅」下車徒歩すぐ
<車>
東北自動車道 古川I.Cから約15分
駐車場:
有備館駐車場
無料/50台
⑥ 令和の伊達政宗公騎馬像 / 仙台駅 牛たん通り(仙台市)
こちらはつい最近、令和2年(2020)「仙台駅」3階に設置された伊達政宗公騎馬像です。仙台駅に設置される騎馬像としては「3代目」にあたります。
先ほど紹介した「柴田町農村環境改善センター」にある初代仙台駅の騎馬像を計測し、3/4のサイズで制作されました。
高さ約2.5m、幅約2.6mの繊維強化プラスチック製。騎馬像はガラス内に収められています。
照明で金色のようにみえますが、騎馬像ならではの黒く凛々しいお姿です。政宗公の愛馬「五島」もピッカピカですよ!
仙台駅3階の「すし通り」「牛たん通り」をまっすぐ進み、牛たん通りの一番奥に騎馬像が設置されています。12年ぶりにおめみえした仙台駅3代目の伊達政宗公騎馬像、ぜひ一度ご覧あれ!
ちなみに仙台駅構内には写真上のようなレリーフもあります。こちらも探してみてくださいね!
政宗公と記念撮影ができる!?
仙台へ来た記念に、伊達政宗公と記念撮影はいかが? 騎馬像のすぐ近くにQRコードを読み込み、AR(拡張現実)アプリをダウンロード。あとはアプリを起動するだけです!
実際に筆者もARアプリを起動し、撮影してみました(写真上)。もちろん撮影した写真はスマホに保存できます。思い出づくりにぜひ。
■仙台駅の基本情報
所在地:
〒980-0021 仙台市青葉区中央1丁目10-10
アクセス:
<電車>
JR仙台駅3階の牛たん通り、すし通りを進み約1分
<車>
東北自動車道 仙台宮城I.Cから約13分
駐車場:
有料/仙台駅屋上駐車場
30分ごと210円
⑦ 黄金の伊達政宗公騎馬像 / 馬事博物館(岩沼市)
岩沼市の竹駒神社内にある「馬事博物館(ばじはくぶつかん)」。こちらには、渋い黄金色をした伊達政宗公騎馬像が展示されています。
サイズは等身大に近く、仙台城跡の騎馬像よりもひと回り小さいようです
馬事博物館にある騎馬像は、仙台城跡初代騎馬像をつくるにあたり、小室達氏が制作した原型試作品。なぜ竹駒神社にあるのでしょうか?
それには当時の岩沼馬市で※博労(ばくろう)を生業としていた、渡邊豊蔵(わたなべ とよぞう)氏が大きく関係しています。
お礼として、原型試作品を奉納した
渡邊氏は馬に関する貴重な収集品およそ1,000点以上を、竹駒神社に寄贈。これを受け、竹駒神社は昭和14年(1939)「馬事博物館」を建築します。
馬の動きを研究していた小室氏は、渡邊氏を訪ね馬に関する指導を受けました。その御礼として、騎馬像の試作原型品を竹駒神社に奉納したのです。
仙台城跡の騎馬像と比べてみると、馬の尻尾の形などが少し異なっています。試作品から施行錯誤し、仙台城跡の初代騎馬像が完成したのではないでしょうか。
※博労…牛や馬の仲買人のこと。産地の農家から牛や馬を買い取って売ったり交換したりする人。
■馬事博物館の基本情報
所在地:
〒989-2443 岩沼市稲荷町1-1竹駒神社
開館日:
2021年1月現在、建物の保存修復工事中のため閉館中で再開は現在未定。
1月1日~1月3日と「初午大祭」のみ
(初午大祭:旧暦2月初午の日から7日間)
アクセス:
<電車>
JR東北本線、常磐線「白石行」に乗車し約20分、「岩沼駅」下車徒歩約11分
<バス>
岩沼駅東口より岩沼市民バス「駅東・中央循環線③」に乗車(約6分)「竹駒神社前」で下車し徒歩で約1分
<車>
仙台東部道路 岩沼I.Cから約10分
入館料:
大人200 円、子ども100 円 (大学生以下)
駐車場:
無料/約300台
第一駐車場、第二駐車場あり
まだまだいっぱい!伊達政宗公騎馬像は他にもある
今回ご紹介した以外にも、まだ騎馬像が存在します。たとえば仙台駅前ガス灯の上にある小さな騎馬像。この騎馬像はガス灯とともにニュージーランドへ渡っています。仙台市役所前の郵便ポストの上にも騎馬像が置かれてました。
また、川崎町・青根温泉「不忘閣」の玄関前に小室達氏がつくったミニチュア騎馬像が置かれています。
さらに、白石市文化体育活動センター(ホワイトキューブ)には、イケメンの戦国BASARA伊達政宗公騎馬像が設置されているそうですよ!
あなたも騎馬像を探す旅に出かけてみませんか?