襖絵は長谷川等伯(はせがわ とうはく)の高弟、長谷川等胤(とういん)による「文王呂尚図(ぶんおうろしょうず)」。
理想の国家「周王朝」の基礎を築いた文王と名補臣・太公望(呂尚)の出会いや、国都・洛陽の繁栄、狩猟の場面が描かれています。
「せっかくですので、良かったらもっと近くでご覧ください」と案内され、こんなにも近くで見ることができました。こちらの襖も、通常は開かれているため、襖絵全体を見ることはできません。
普段立ち入れない「上段の間」へ
上段の間は、別名・御成りの間(おなりのま)と呼ばれる藩主の部屋です。畳が一段高くなっており、明かり取りの火頭窓、違い棚、右手には帳台構が設けられています。
襖絵は「四季花卉図(しきかきず)」で、平和と豊かさを表しています。床の間の「梅竹図」は、藩主の資質として理想とされる高潔と清操を表し、帳台構の「牡丹図」は富貴を表しているそうです。
伊達政宗甲冑倚像復元像の記念撮影!
こちらは伊達政宗甲冑倚像復元像。なんと、ほぼ実物大なんだそうです。ツアーでは、特別に真正面から撮影することができます。政宗公とのツーショットも夢ではない!
甲冑倚像の背後にある火頭窓の上には、「圓満」の額がかかげられています。こちらは 5代藩主・伊達吉村公の筆によるものだそうです。
次は、左手にある上々段の間へ。
上々段の間
天皇、皇族をお迎えするためにつくられたと伝わる「上々段の間」です。上段の間よりも、畳面がさらに一段高くなっています。付書院(縁側に張り出した出窓)と、上段の間より大きな違い棚が設けられていました。
違い棚の「紅白椿図」に描かれた大椿は、皇室の永久の繁栄を願ったもの。1876年(明治9)明治天皇の東北御巡幸の際、瑞巌寺が行在所となり、この「上々段の間」に宿泊されたそうです。
上々段の間の天井は、折上小組格天井(おりあげこぐみごうてんじょう )というもので、天井の格子が花菱(菱形の周囲を花弁の形にしたもの)格子となっています。
次は、ここから一旦部屋を出て御成玄関へ。
御成玄関
御成玄関(おなりげんかん)は、本堂の南西端に接続する天皇や皇族、藩主専用の玄関です。折れ曲がっている形状から「乙字型玄関」とも称されているそうです。
廊下を進み、羅漢の間へ向かいます。
羅漢の間
羅漢(らかん)の間には、伊達政宗公の殉死者20名と、2代藩主・忠宗公の殉死者16名の位牌が祀られています。
この部屋だけ障壁画の制作年代が異なっているそうで、本来は納戸として使用したのではないかと考えられています。障壁画「十六羅漢図」は、1877年(明治10)頃の制作で、狩野左京の末裔である佐久間得楼の筆によるものだそうです。
続いては、となりの墨絵の間へ。
墨絵の間
墨絵の間は、住職や僧侶の控えの間。応接室だったともいわれています。絵師は吉備幸益(きびこうえき)で、本堂内唯一の水墨画。当時のままの貴重な原本です。
墨絵の間の天井は、角材を格子に組み、その上に板を張った格天井(ごうてんじょう)と呼ばれる造りをしています。天井は、各部屋の格式によって異なっているので、ぜひ注目してみてください。
墨絵の間の角を右手に折れ、菊の間へ向かいます。
菊の間
菊の間は、御典医(ごてんい)の詰め所として使用された部屋です。御典医とは将軍家や大名に仕えた医師のこと。
襖絵の絵師の「菊図」は、狩野左京一門の筆によるもので、菊が薬草として珍重されてきたことに由来しているそうです。
本堂の拝観はここまで。出入口の庫裡へ戻ります。
庫裡守護神
出入口の手前に祀られている庫裡守護神。中央に韋駄天、右に毘沙門天、左に大黒天が祀られています。
瑞巌寺128世の筆「関」
庫裡守護神があるフロアにある瑞巌寺128世五雲軒・隆芳全昭による筆が展示されていました。最後に今回の特別ツアー限定の御朱印を紹介します。
春の特別ツアー限定御朱印
最後に、今回の特別ツアー限定の御朱印を紹介します。
限定御朱印には、松島と政宗公を連想させる三日月が描かれていました。下は、今回の特別拝観ツアーのチケットです。
瑞巌寺の基本情報
住所:
宮城県宮城郡松島町松島字町内91
アクセス:
【公共交通の場合】
JR仙石線「松島海岸」駅より徒歩約10分
【クルマの場合】
三陸道「松島海岸」ICより約15分
駐車場:
なし
ツアーへの参加方法:
対象施設のホームページ等から直接の申し込みます。詳細は下記の公式HPより確認してください。
春の特別ツアーは2022年4月15日(金)まで!
瑞巌寺が企画した春の特別ツアー。松島町内宿泊施設の宿泊者限定で、平日のみの開催となっています。貴重な襖絵などを至近距離で拝観でき、伊達政宗甲冑倚像復元像との記念撮影もできるという、一般公開では絶対に体験できない特別なツアーでした。
今回の取材では、瑞巌寺の僧侶の皆様に大変お世話になりました。また拝観に訪れたいと思います。ありがとうございました。