いつから知られるようになった?「せり鍋」の歴史
伊達政宗も「せりの根っこ」が好物だった!?
文献によると、名取市周辺におけるせり栽培は、江戸時代初期にあたる1620年頃には行われていたようです。その美味しさは広く知れ渡り、毎年京都の近衛家に献上されるほどだったとか。
奥州の戦国武将であり、仙台の礎を築いた伊達政宗。彼もまた、せりを美味しさを知っていました。
戦国時代末期の1590年(天正18)、伊達政宗は母の義姫や妻の愛姫とともに福島県の黒川城(現会津若松城)で正月を迎えました。その後、1月7日に行われる伊達家の年頭行事「七種連歌会」で、せりに関する句を詠んでいます。
「七種を 一葉によせて 摘む根芹」
(ななくさを いちようによせて つむねぜり)
この句は「春の七種(ななくさ)を1つにまとめて根芹と一緒に摘む」という意味で、仙道七郡(現在の福島県中部~北部)を「七種」と表現し、せりのことを”根芹(ねぜり)”と詠んでいます。これは仙道七郡を手中に収めた喜びを詠んだ句で、政宗は「せりの根っこ」はおいしい重要な部分であることを知っており、とっさになぞらえたのではないかとも考えられます。
また4代仙台藩主・伊達綱村の書状にも、名取のせりに関する記述があったとされています。
「一、大根の事悦申候、名取の大根殊外宜候、芹も前々より名取のハよろしくて候て、……」
と、「名取のせりが素晴らしい」と伝えています。(『大日本古文書』より)
なぜ「せり鍋」は仙台名物になったのか
根っこの部分を丸ごと食べるというのは強烈な印象を受けますし、話題性も十分あります。また野菜が主役という鍋も、あまり聞いたことがありません。
このような意外性もあり、かつ仙台でしか食べられない特別感が多くの人を惹きつけたのではないでしょうか。
宮城県民は、冬になると必ず「せり鍋」を食べているの?
さて、いまでは仙台名物となっている「せり鍋」ですが、宮城県民はいつも食べているでしょうか?
まず仙台市に住む方に話を聞いてみました。
「自宅で作ることも外で食べに行く機会もほとんどない」
「冬になると会社帰りの飲み会で、仙台市内のせり鍋料理店を予約して行く」
まったく馴染みのない人もいれば、外へ食べに行く人もいました。自宅で作る、という声は少なかったです。
また地域差もあるようで、県北に住んでいる友人に聞いてみたところ、「名前は聞いたことがあるけれど食べたことがない」という声がほとんどでした。そもそも近くに「せり鍋」を提供するお店がないので、やはり発祥地である仙台市や名取市以外の地域では馴染みがないのかもしれません。
結論「せり鍋」にまったく馴染みのない県民もいる。仙台市民も頻繁に「せり鍋」を食べる習慣はないものの、冬になるとお店に食べに行くこともある。
仙台せり鍋を作ってみました!
今回この記事を執筆するにあたり、筆者も自宅で初「せり鍋」を作ってみました。
せり鍋は「これが正解!」というレシピが存在しないので、出汁や具材は好みで決めていいと思います。
まず水を入れた鍋に昆布を入れて半日放置。昆布出汁をつくっておきます。鰹節は使いませんでした。
せり
せりは仙台朝市商店街で購入。宮城県産の記載があるものを選びました。せりの価格は、お店によって違うようです。
主役のせりを、葉、茎、根っこに切り分けます。
とくに根っこの部分は、根の間に泥が付いているので流水でしっかり洗いしましょう。水で取り除けなかった汚れは、竹串、つまようじ、歯ブラシなどを使って地道に泥をかきだしていきます。
調べてみたところ、水を張ったボウルに根っこの部分を数分間おいておくと、土がふやけて汚れが落としやすくなるそうです。
具材
「仙台せり鍋」は、せりと肉(鴨肉や鶏肉)のみが王道ですが、具だくさん好きの筆者はいろいろ入れます。「せり鍋にはこれを入れる!」と決まった具材はないので、せりの他に、ねぎ、ごぼう、豆腐、油揚げなど、自分好みの具材を追加します。
出汁は、鰹と昆布を使用するのが多いようです。醤油やみりん、酒で味付けした鶏ガラを使うレシピあり、味付けはお店や家庭によってさまざまですね。
【今回使った食材】
・せり
・鶏もも肉
・豆腐
・しめじ
・ごぼう
・油揚げ
いよいよ、鍋へ具材投入。まずは昆布出汁を入れた鍋に鶏もも肉を入れます。次に、豆腐、ごぼう、しめじ、油揚げ、せりの根っこ、茎、葉の順に入れてみました。
具材を全て投入完了。グツグツ煮込んだらできあがり。仕上げに七味をかけていただくのもいいですね。
せりの葉と茎は、シャキシャキ感が残るくらいがちょうどいいと思います。せりの食感を確かめながら、煮込み加減を調節しました。
根っこは葉や茎よりも少し長めに煮込んでみてください。昆布と各具材の出汁が染み込み、嫌な感じの苦みがなくて美味しくいただけます。
はじめて「せり鍋」を食べるならここ!仙台にある名店&人気のお店5選
せり鍋がはじめてという方は、ぜひお店で食べてみてください。今回は旅行者や未経験の方も利用しやすい、仙台市内にあるせり鍋を提供するお店を5店舗ピックアップしました。
【大町西公園駅】居酒屋 佗び助
「仙台せり鍋」の代名詞的な名店で、TVや数多くのメディアでも紹介される「居酒屋 侘び助(わびすけ)」。仙台市出身のタレント・ワッキー貝山氏の母親が経営しており、お笑いコンビ・サンドウィッチマンも通う居酒屋です。
主役の仙台せりと鴨肉のみを使った、王道の「仙台せり鍋」をいただけます。女将さんが作ってくれるので、食事に専念できるのも嬉しいところ。仙台せり鍋がいただけるのは9月~2月頃まで。
店内はカウンター席と堀ごたつ式テーブル、個室があり予約も可能です。とくに冬季は、数ヵ月先の予約も埋まってしまうほどの人気ぶり。なるべく早めに来店計画を立て、事前予約をとりましょう。
【居酒屋 佗び助の基本情報】
住所:
宮城県仙台市青葉区立町6-16
営業時間:
月曜日~金曜日
17:00~23:00(L.O.22:00)
土曜日
17:00~22:00(L.O.21:00)
定休日:
日曜日(日曜日と月曜日が連休の場合は、日曜日営業、月曜日休み)
アクセス:
【公共交通の場合】
仙台市地下鉄東西線「大町西公園」駅より徒歩約4分
【クルマの場合】
東北道「仙台宮城」ICより約8分
駐車場:
なし
【仙台駅西口】いな穂
JR「仙台」駅西口より徒歩約3分、名掛丁センター街にある「いな穂」。こちらのせり鍋は「せりしゃぶ」で、器に大量に盛られたせりをしゃぶしゃぶしていただくという独特な食べ方です。根っこや葉を、しゃぶしゃぶする秒数まで、お店の方が丁寧に説明してくれます。シメには、珍しい青い殻の卵を使った雑炊が定番のようです。せりしゃぶの提供は10月中旬~5月上旬頃まで。
宮城の地酒の種類がとても多く、料理と一緒に楽しめます。席数は、カウンター5席と小上がりテーブル席が2つ。駅からも近く1人でも気兼ねなく利用できるお店です。
【いな穂の基本情報】
住所:
宮城県仙台市青葉区中央1-8-32 名掛丁センター街東
営業時間:
月曜日~土曜日
15:00~23:00
定休日:
日曜日
アクセス:
【公共交通の場合】
JR「仙台」駅西口より徒歩約3分
【クルマの場合】
東北道「仙台宮城」ICより約12分
駐車場:
なし