目的地は閉局した郵便局だった
日本三景で有名な松島の隣、東松島市にある宮戸島。”奥松島”とも呼ばれ、県内屈指の景勝地として知られているエリアです。
そんな宮戸島には、水曜日だけ開く架空の郵便局「鮫ヶ浦水曜日郵便局」がありました。※現在は閉局しています。
郵便局に集まってくるのは、どこかの誰かが書き留めた”水曜日の出来事”が記された手紙。
郵便局員が1枚1枚内容を確認し、個人情報を伏せたうえで無作法に交換し、投函した方へ手紙を送る。というプロジェクトが行われていました。
2018年12月5日(水)に閉局しており、現在はポストもなく手紙を出すことはできません。
しかし心強く惹かれていた筆者は、閉局した「鮫ヶ浦水曜日郵便局」を訪ねてみることにしました。
「あおみな」から自転車利用がおすすめ!
出発前にGoogleマップで道を確かめたところ、「宮戸市民センター(あおみな)」から徒歩45分(車は約8分)という距離でした。
車がないため徒歩を覚悟していたものの、宮戸市民センター(あおみな)でスポーツバイクをレンタルことを知り、自転車で向うことにしました。
【セルコホームあおみな内・奥松島遊覧船案内所】
住所:
宮城県東松島市宮戸川原5番地1
利用時間:
9:00~16:00(年中無休)
アクセス:
JR仙石線「野蒜駅」から車もしくはタクシーで約10分
郵便局までの道のり
潜ケ浦を目指す
宮戸市民センター(あおみな)から緩やかな坂道を越えては下り……20分ほどで潜ケ浦(かつぎがうら)の入り江に到着しました。
せっかくなので入り江の方を散策。小舟が停泊していましたが、人影は一切ありません。
波もなく、無音。
分岐点に戻り、入り江の脇に続く道を進んでいきます。
不気味なトンネルに遭遇!
1~2分で鬱蒼とした森の中へ。嵯峨見台の案内標識が立っていました。
突如現れるトンネル
すると森に溶け込むように、ぽっかりと開いた穴がみえてきました。
ト……トンネル……? 恐る恐る近づいてみます。
素掘りのトンネルです。思わず足を止めてしまいました。
しかしここを通らなければ、目的地に辿りつきません。意を決して、足を踏み出します(周りには人はいません)。
8月中旬。外はジトっとしたうだるような暑さでしたが、トンネル内部は驚くほどヒンヤリ。
街灯などは一切なく、昼夜問わず真っ暗なのでライトは必須です。
長さ50メートルくらいでしょうか。
写真では分かりづらいですが、トンネル中間あたりが広間のようになっていました。
出口が近づいてきました。美しい光景に怖さも吹っ飛び、カメラのシャッターを切ります。
これは鮫ヶ浦水曜日郵便局が閉局する前に、公式HPで表示されていた光景です(現在は閉局しているため表示されていません)。
トンネルをぬけると、そこには水曜日がありました。(出典:鮫ヶ浦水曜日郵便局)
この先に鮫ヶ浦水曜日郵便局があります。
トンネルから出てきました。ホッと一息つきます(帰りも通らなくてはなりません)。
このまま郵便局に向って一直線!
ふと視線を左に向けると、トンネルと同じような穴がいくつもありました。中には小舟が置かれているようですが……。
トンネルから徒歩2分で鮫ヶ浦に到着
歩くこと1~2分、目的の入り江(鮫ヶ浦)に出てきました。右手にあるのが、目的の鮫ヶ浦水曜日郵便局です。
閉局しているため、ポストはありません。この場所にいろんな人の水曜日が集まっていたと思うと、なんだかロマンを感じます。
これで目的は達成しましたが、ふと気になるものが……。
海へと続く線路です。かつては漁港だったことを考えると、陸から船を運ぶために使ったレールなのでしょうか?
海へ続く線路の正体は……?
気になったので帰ってから調べてみると、驚くべき事実が判明。
なんと郵便局があった鮫ヶ浦は、太平洋戦争時に「震洋(しんよう)」という特攻艇の秘密基地でした。
震洋は小型ボードに爆薬を積み、そのまま敵に体当たりするという恐ろしい特攻兵器。
戦局が悪化する中、船体には量産のしやすいべニア板が使われていたそうです。
震洋はこの鮫ヶ浦だけでなく、米軍の本土上陸に備えて全国各地に配備されていました。
その国内最後とされる146番目の部隊が、ここ宮戸島の鮫ヶ浦に置かれたのです。
前述した横穴も、震洋を隠すためにつくられた格納庫の跡だったそう。
トンネルの中間部が広間になっていたのは、もしかすると震洋を隠すための空間だったのかも知れませんね。
そのまま終戦を迎え、宮戸島から震洋が出撃することはありませんでした。
しかし震洋の部隊全体の戦死者は、2,500人以上にのぼるといわれています。
東松島市に泊まろう!
今回の舞台となった場所は、日本三景でおなじみ松島町のお隣、東松島市です。
宮戸島には民宿が多く、新鮮な海の幸をつかったボリューム満点の手料理をいただけます。
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トンネルの先には、忘れてはならない歴史があった
思わぬ形で、太平洋戦争の歴史と向き合うことになった今回の旅。
終戦から半世紀以上。遠い過去の話のように思っていましたが、戦争を身近に感じた体験でした。
海へ続くレールは、今もなお色褪せることなく残っています。