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名取川が形成した絶景「磊々峡」
磊々峡は「らいらいきょう」と読みます。
恐らく地元民以外は読めないんじゃないか、というくらいに馴染みのない漢字です。
『坊ちゃん』『吾輩は猫である』で知られる夏目漱石の門人で、ドイツ文学者の小林豊隆(こみや とよたか)氏が名付けたといわれています。
岩と岩の重なりを見て、磊々峡と命名したんだとか。
そんな磊々峡があるのは、日本三名湯のひとつ「秋保(あきう)温泉」。
古くより名取の御湯と呼ばれ、仙台藩を治めた伊達家藩主の御殿湯が置かれました。
そんな秋保温泉内を流れる、名取川沿いに続く峡谷が磊々峡です。
今回は「秋保・里センター」を起点に、11月下旬晩秋の磊々峡をふらっと散策してみました。所要時間は片道30分ほどです。
秋保・里センターから散策スタート!
名取川が作りだした谷の深さは、およそ20m。峡谷を沿うように、全長約650mの遊歩道が整備されています。
「磊々峡 もみじのこみち」を周遊し遊歩道へ
秋保・里エンターから磊々峡の入口まで、およそ3分。
秋保・里エンターの裏手にある「磊々峡 もみじのこみち」は、磊々峡遊歩道につながる周遊ルートです。
せっかくなのでこの道を通り、磊々峡の遊歩道入口を目指します。
磊々峡 もみじのこみち
磊々峡の中でも、もみじがたくさんある場所です。
すでに落ちている葉、まだ緑を残した葉もありますが、全体的に赤く色づいた紅葉を楽しめました。
ライトが付いているのは、例年10月下旬~11月下旬にかけて「磊々峡もみじのこみちライトアップ」のためです。
古の石仏群もみられます。
5分もかからず周遊できるため、遊歩道の前にぜひ寄り道を!
恋人の聖地「覗橋(のぞきばし)」
もみじのこみちを通り抜け、覗橋のたもとに到着。
半円状に突き出ているところから、見下ろしてみると…?
岩場にハートの形をした窪みを発見! 「覗橋ハート♡」です。
自然に形成されたもので、2014年にNPO法人地域活性化支援センターにより、「恋人の聖地」として選定されました。
今や磊々峡の名所となっています。
下をのぞいてみると、名取川が流れています。写真左の階段部分が、磊々峡の遊歩道です。
磊々峡は覗橋を挟み、上下約2kmにわたり続いています。
覗橋を渡ると、「磊々峡入口」の標識を発見。ここから650mの遊歩道に入ります。
覗橋の下の方まで降りてきました。ハートの窪みもみえます。
峡谷の岩には苔が広がり、その上には色のない枯れ葉が覆っています。
これはこれで、風情のある景観です。
奇面巖(きめんいわ)
覗橋のすぐ近くにある、人の横顔にみえる奇面巖。
水面をのぞきこむような、人の横顔にみえますね。
奇面巖を観たあと、いざ遊歩道を進みます!
磊々峡は、旅館やホテルが軒を連ねる温泉街の中心にある峡谷ですが、クマの目撃情報があります。
人の気の少ない、早朝散策などは気を付けてください。
八間巖(はちけんいわ)
途中、白い湯煙が立ち上っていました。温泉のようです。
遊歩道の脇には、和風の白い外観が特徴の「秋保グランドホテル」が建っています。峡谷に面した客室は、磊々峡を見下ろせる絶景のビュースポットでしょうね。
あっという間に八間巖に到着!
八間巖よりも、その下にある巨大な岩に目を奪われ、見どころスポットを撮影し忘れる事態に……。
時雨滝(しぐれたき)
八間巖の隣にあるのが、時雨滝です。雨天時に現れる滝だそうですが、この日は曇りでした。
エメラルドグリーンのような水面は、川底の砂粒まで見通せるほど透明度が高いです。
遊歩道にある階段を下りていくと……
磊々峡の底に到着。岩の影になり写真に映っていませんが、左側に時雨滝と八間巖があります。
三筋滝(みすじたき)
遊歩道に戻り、先へ進みます。
所々ベンチや東屋が設置されており、休憩しながら散策を楽しめます。
三筋滝に到着です!
細く白い水流が、落ち葉に覆われた岩肌を伝い、静かに流れ落ちていきます。
下の方で3方向に流れていることから、三筋滝と名付けられたそうです。
猪飛巖(ししとびいわ)
次第に遊歩道の幅が狭くなっていきます。
階段が多いので、ヒールのある靴だと足が疲れてしまうかもしれません。
東屋がみえてきました。ここも磊々峡のビュースポットなので、ぜひ足を止めて見てください。
東屋の近くにある階段を下りていくと、展望スペースがあります。
こちらが展望スペースからの風景。今まで狭く細い谷でしたが、この場所だけ少し開けています。
東屋を通り過ぎると、猪飛巖はすぐそこです。
朱色の橋にみえる、飛び出したような岩が猪飛巖。
猪や鹿が渡ったとされることから、その名が付きました。
天斧巖(てんおのいわ)
いよいよ、最後の見どころ天斧巖へ。
橋の下のトンネルを潜り抜けると…
峡谷の岩壁、紅葉、名取川を、同時に広い視界でのぞめるビュースポットが待っています。
紅葉ピーク時は、こんな感じで色鮮やかな渓谷美がみられるようです。取材日は11月下旬の晩秋で、ほとんどの木が落葉していました。
後ろを振り返ると、猪飛巖の真上にかかる朱里の橋がみえます。
天斧巖はトンネルを抜けたすぐ先にありました。
階段を下りていき、展望スペースから下をのぞいてみると、真っ二つに割れた巨大な岩が姿を現します。
古くは神斧巖とも呼ばれていたそうです。まるで巨人が斧を振り下ろして割ったかのような、不思議な奇石です。
名もなき滝?
ガイドマップの案内によると、天斧巖が最後の見どころスポットでしたが、遊歩道は続きます。
もみじは少しピークを過ぎたくらいで、11月下旬でもまだまだ楽しめそうです。
ほどなくして、滝を発見。案内標識などはなく、名前はわかりませんでした。
名もなき滝を通り過ぎ、遊歩道の終点に到着。
来た道を戻るのも手ですし、国道286号沿いを歩いて戻るのもいいです。
国道に、昭和レトロな電車が現れる!
国道286号に出て、秋保・里センター方面を歩いていると、突然レトロチックな電車の車体が現れました。
こちらは仙台市電のボギー車100型(119号車)です。1976年(昭和51)3月に市電が廃止されるまで、仙台市民の足として活躍しました。
市電廃止後は、長崎電気軌道(株)に譲渡され、平成12年12月廃車されるまで、長崎市内を走り続けたそうです。
その後「余生を故郷の仙台で送らせては?」ということで、鉄道ファンの好意もあり現在この場所に展示されています。
秋保・里センターの足湯で、のんびり休憩しよう!
磊々峡の散策を終えたら、ぜひ秋保・里センターへ立ち寄ってみてください。
無料で浸かれる温泉の足湯(寿右ェ門の湯)があります。
週替わりで異なる温泉が楽しめ、取材日は「奥州秋保温泉 蘭亭」の亀の湯でした。
湯ざわりは柔らかく、サラリとしたお湯です。ぬるま湯だったので、入りやすい温度感でした。
足湯の正面に広がる、もみじのこみちの紅葉景色にも癒されます。
名物グルメ、「主婦の店 さいち」のおはぎ
秋保・里センターから徒歩6分ほどの場所にある、主婦の店 さいち。
一見とくに変わった様子もなく、ごく普通のスーパーなのですが、ここで販売されている「おはぎ」がスーパーソウルフードなんです。
平日でも5千個近く売れ、何回もテレビで紹介されている宮城の名物。
この日は平日ど真ん中の水曜日。11時頃にお店へ寄りましたが、入口から「おはぎ」のある惣菜コーナーまで、すでに行列ができてました。
甘さ控えめのあんこがたっぷり! はじめの一口はあんこだけになります笑。
あんこ以外にも、きなこ、ごま、納豆なんていう変わり種も!
秋保・里センターの敷地内に、テーブルやベンチが備えられた休憩スペースがあり、飲食スペースとしても活用できます。
主婦の店 さいちの基本情報
住所:
宮城県仙台市太白区秋保町湯元字薬師27
営業時間:
9:00~19:00
定休日:
第2・第4水曜日(8、12月は変更あり)
アクセス:
秋保・里センターより徒歩約6分
「磊々峡」のアクセス
公共交通の場合
・仙台駅前西口バスプールのりばより、宮城交通バス「秋保温泉行き」に乗車し約55分、「のぞき橋」下車すぐ(もしくは「秋保・里センター」下車徒歩約3分)
・仙台駅よりJR仙山線に乗車し約27分、「愛子駅」下車。2番のりばより仙台市営バス「二口・野尻町町北・上の原行のいずれか」に乗車し約12分、「磊々峡入口」下車
・仙台駅63番のりば(青葉通り沿い)よりタケヤ交通・秋保・川崎 仙台ライナーに乗車し約40分、「秋保・里センター」下車
車の場合
・仙台駅より国道48号線、県道132経由で約30分
・東北自動車 仙台南I.Cより、国道286号、県道62号経由で約15分
駐車場(2ヵ所)
① 無料駐車場(覗橋たもと付近の交差点近く)
やや広く、舗装されていない駐車場。磊々峡に一番近いです。
② 秋保・里センター(無料)
秋保・里センターの駐車場も、無料で利用できます。普通車38台分のスペース。※大型は事前相談が必要。
立ち寄りたい、日帰り温泉施設
秋保・里センター館内に、各旅館の日帰り温泉情報が公開されています。今回は、磊々峡から徒歩圏内(10分前後)にある日帰り温泉施設をピックアップ!
伝承千年の宿 佐勘
秋保温泉内で、唯一名取川を眺めながら源泉掛け流しを楽しめる温泉。大浴場のみ利用できます。
【休み】土、日、祝
【料金】大人1,300円、小人(3歳~小学生)600円
ホテルニュー水戸屋
広々とした大浴場と、外気を感じられる満月風呂、1人でゆっくり浸かれる陶器風呂など、さまざまなタイプの入浴を楽しめる。
【休み】
【料金】大人1,100円、小人(3歳~小学生)550円
岩沼屋
3種類の湯温から選べる大浴場があります。
【休み】不定休
【料金】大人1,170円、中学生1,100円、小学生550円、幼児無料
佐藤屋旅館
大浴場と露天風呂が楽しめる。※男女入れ替わり制です
【休み】火曜日
【料金】大人730円、小人(3歳~小学生)330円
奥州秋保温泉 蘭亭
大浴場の床が畳という、珍しい温泉。露天風呂も楽しめます。
【休み】火曜日
【料金】大人900円、中学生830円、小人(小学生)500円
篝火の湯 緑水亭
敷地から湧き出る自家源泉をもつ施設で、引き込んだ温泉を満喫できる。大浴場、露天風呂あり。
【休み】月曜日
【料金】大人1,300円、小人(4歳~小学生)650円
ホテル瑞鳳
ゆっくりとくつろげる大浴場、日本庭園にある露天風呂、ジャグジー、サウナなど、日帰りでも多様な温泉を楽しめる。
【休み】不定休
【料金】大人1,390円、小人(3歳~小学生)660円
秋保グランドホテル
磊々峡の傍に建つ施設で、峡谷に生い茂る緑をみながら森林浴と温泉を楽しめる。露天風呂あり。
【利用時間】10:00~15:00(受付14:00まで)
【休み】不定休
【料金】大人1,200円、小人(3歳~小学生)600円
※土日祝は大人1,500円、小人750円
ホテル華乃湯
自噴する自家源泉をもち、豊富な湯量が自慢で源泉掛け流しを楽しめる。露天風呂あり。
【利用時間】10:30~15:00(受付14:00まで)
【休み】不定休
【料金】大人900円、小人(3歳~小学生)500円
※毎月7と8は、大人600円。
※入浴時間や定休日など、営業内容は変更される場合があります。必ず、お出掛けの前に各施設へ直接ご確認ください。
磊々峡は、いつでも美しい
紅葉シーズンの磊々峡はもちろんですが、季節の移ろいを感じる晩秋もオススメです。人も少なく、ゆっくり散策を楽しめます。
歩いた後は、足湯や日帰り温泉でのんびり過ごすのもいいですね。