目次
かつての仙台の交通の要、仙台市電
かつて、市民の足として活躍した仙台市電。廃止から45年以上が経ちますが、今でも市電ファンには根強い人気があります。
今回は市電を保存している仙台市電保存館を取材。どんな車両が展示されているのでしょうか。
車両本体や関連展示物、歴史なども紹介します。
発売日 : 2018/5/22
仙台市電保存館とは?
仙台市太白区にある仙台市の電車保存施設「仙台市電保存館(せんだいしでんほぞんかん)」は、1991年(平成3)に開館しました。
館内には、大正時代や昭和時代に製造された車両などが展示されています。なかでも大正時代に製造された木造の市電は、レトロ感たっぷりで訪れる人々を楽しませてくれます。
乗車券や車両の部品も展示
当時、実際に使用されていた乗車券や定期券、回数券なども展示。
市電で使用された当時の制御器などの部品も展示されており、市電ファンにはたまらない魅力満載の施設となっています。
電車模型と仙台市内のジオラマ
さらに、電車模型と昭和時代の仙台市内を再現したジオラマを展示。市電の模型がコトコトと走行しています。
では、さっそく仙台市電保存館に行ってみましょう。
仙台市電保存館は、どこにあるの?
仙台市電保存館は、仙台市地下鉄南北線の車両が所属する富沢車両基地内にあります。
「富沢車両基地」と書かれている道を左へ進んでください。
仙台市電保存館は左へ。ここの右手には駐車場があります(駐車可能台数は3台)。
では、入口に行ってみましょう!
仙台市電保存館へGO!
こちらが仙台市電保存館の入口。「こんにちはー!」と声をかけて入って行くと、作業中だった職員の方が「こんにちはー! いらっしゃいませー。」と元気よく迎えてくれました。
さて、館内にはどんなものが展示されているのでしょうか。さっそく見に行ってみましょう。
展示車両①「1号車(モハI型)」
最初に目に飛び込んできたのがこちら。この車両は、1号車(モハⅠ型)で1926年(大正15)に川崎造船所で製造された木造四輪単車です。
大正当時の価格は9,450円。現在の米価で換算すると、約1,876万円になるそうです。仙台市はこの車両を1928年(昭和3)までに30両購入。この市電は創業から約40年もの間、仙台市民の足として大活躍しました。
順路の案内板がありますので、順路通り進みましょう。
この1号車は仙台市電保存館の建設に伴い、永久保存されることになりました。
1976年(昭和51)の市電廃止の際、創業当時の姿に修復。最後のお別れとして3日間だけ運転を行い、市民に多くの感動を与えたそうです。
1号車のライトと救助網
ライトの下にある網は、ロックフェンダー式と呼ばれる救助網。人の巻き込み防止と救助するために設けられました。
強度を保つため、(※)柿渋で補強した当時の網だそうです。ライトも貴重なもので、在庫はあと数個しか残っていないとのことでした。
1号車の集電装置
1号車の屋根に取り付けられているのがトロリーポールと呼ばれる集電装置。ロープで下げてフックに引っ掛けるようになっています。
1号車の車内
1号車の車内を見てみましょう。当時の車掌さんの恰好をしたマネキンが迎えてくれます。
この車両は、富沢車庫で再修復されたそうで、車内は床も天井もピッカピカ。床部分は釘を1本も使っていないそうです。
座る部分がちょっと狭くなっているのがわかるでしょうか。これは当時の衣服は着物が主流だったため、後ろの帯が背もたれ部分に当たらないよう、少し手前に座るように設計されたため狭くなっているそうです。
車内を照らすレトロな電球色が郷愁を誘います。天井もつり革も新品のように輝いていました。
右手上にあるロープを2回下に引くと「チンチン!」と音が鳴ります。これがチンチン電車といわれる由縁だそうです。
当時は、仙台市内をこんな感じで満員のお客さんを乗せていたのでしょうね。
広瀬橋を走る1号車の写真が展示されていました。
続いて、123号車を見てみましょう。
展示車両②「123号車(モハ100型)」
こちらは、123号車(モハ100型)という型式の半鋼製二軸ボギー車。
1952年(昭和27年)に新潟鉄工所で製造された仙台市電初の大型車です。当時の価格は700万円でした。
同型車は100型と称して仙台市は、1948年(昭和23)~1952年(昭和27)の間に24両を購入。戦後の復興に大いに活躍しました。
123号車の走行写真
仙台市内を走行する123号車。周囲のお店の看板がノスタルジックですね。
続いて車内を見てみましょう。
123号車の車内
こちらも車内は、とてもきれいに整備されていました。大正時代の座席シートと違って、深く座れるようになっています。
ピンク色の「とまります」ボタンを、実際に押してみると「ピンポン!」と鳴って点灯しました。
ご存じの方は懐かしく感じるのではないでしょうか。
こちらは運転席です。左側の楕円形の機械が制御器(コントローラー)。今と比べると、かなりシンプルな気がします。
123号車の行き先プレート
行き先を示すプレートに注目! 現在の行き先はデジタル表示ですが、当時はいたってシンプルです。
このように、ひっくり返して差し込むだけ。手動で差し替えていました。
123号車の料金箱
1969年(昭和44)に経営の健全化のためワンマン化の車両改造工事が行われました。
運賃は1972年(昭和47)当時で、大人40円。経済成長とともに値上がりし、1974年(昭和49)に大人50円に。市電廃止となる1976年(昭和51)まで続きました。
となりにある415号車を見てみましょう。
展示車両③415号車(モハ400型)
この415号車(モハ400型)は、1963年(昭和38)に日本車両製造所で製造された全鋼製二軸ボギー車です。
415はラストナンバーで、仙台市電としては最後の新造車。当時の価格は895万円でした。
この車両は、運転と保守効率を高めるために軽量化を図っています。さらに、多くの自動車部品を取り入れたそうです。
415号車の車内
こちらの車内も整備が行き届いており、床が光り輝いていました。シートもまるで新品のよう。
415号車の行き先プレート
123号車同様、こちらも手動でひっくり返す仕組みになっています。
415号車の運転席
415号車の制御器(コントローラー)です。
415号車もシンプルですが、123号車よりもスイッチ類が増え圧力計も追加されていました。
次は、車両以外に何があるのか他のエリアも見てみましょう。
仙台市電保存館は他に何があるの?
仙台市電保存館には、車両以外にも市電に関するものがたくさん展示されているので紹介します。
市電の駆動装置
まずこちらは、車両の駆動装置。電車の動力源による回転力を輪軸へ伝える装置です。この駆動装置は、101号車に搭載されていました。
旧字体の「仙臺市 交通部 北仙臺變電所」のプレートがいいですね。
市電の台車
1962年(昭和37)に製造された台車。全国的にも珍しい直角カルダン駆動方式を採用しているそうです。
パンタグラフ
こちらは、電車の屋根の上に取り付けられている集電装置のパンタグラフ。このパンタグラフはZのような形状になっていることから「Zパンタグラフ」と呼ばれています。
市電の駅名板
中央に見えるのがホーロー製の停留所名板です。全く色褪せがなく、きれいな状態でした。
下の黄色と黒色の金属棒は、車両と車両を連結させる連結棒です。
市電の銘板
市電に取り付けられていた銘板たち。左の緑色の丸いマークは、伊達家の家紋である三ツ引両から考案された仙台市の紋章です。
昭和時代の電車模型
こちらのジオラマは、市電が走っていた1969年(昭和44)当時の仙台市内を再現したもの。実際に市電模型が走行しており、当時の雰囲気を今に伝えています。
踏切の警報機がとてもリアルでした。
発売日 : 2010/6/10
ページ数:110P
次は2階に行ってみましょう。
仙台市電保存館の2階へ
入口の近くに階段があるので、こちらから2階に上がりましょう。
なんと!右の手すりには、 レールが取り付けられています。
2階から見る市電
2階からは、こんな市電の姿を眺めることができます。
市電の屋根やパンタグラフが目の前に! これはなかなか見ることができない光景ですね。
最後に市電の歴史などを紹介します。
仙台市電の歴史
仙台市電は、今から95年以上前の1926年(大正15)に開業してから、1976年(昭和51)まで約50年間、仙台の街を走り続けました。
歴代の仙台市電型式
歴代の仙台市電たち。全部で12種類もの車両が走っていたんですね。
余談ですが、長崎市から里帰りした仙台市電100型が秋保温泉駅跡に展示されています。
仙台市電の路線図
仙台市中心部をくまなく網羅していたことがわかります。レジャーセンター前(現在の錦町公園)など、今とは表記が違う場所も。
なぜ仙台市電は廃止になったの?
きっかけは、1965年代(昭和40)からのマイカーブームが要因。
車が増えたことにより、道路は大渋滞に。市電の速度が落ちてしまい、定時制が確保できなくなったのです。時代の流れと交通環境の変化により、仙台市電は廃止となりました。
【仙台市電保存館の基本情報】
住所:
宮城県仙台市太白区富沢中河原2-1
営業時間:
10:00~16:00
休館日:
・月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日)
・祝日の翌日(土曜日、日曜日、祝日に当たる場合は開館)
・12月28日から翌年1月3日
※冬期間(12月1日から翌年3月19日)は土曜日、日曜日、祝日(日曜日が祝日の場合、翌日も開館)を除き休館
入館料:
無料
アクセス:
【公共交通の場合】
仙台市地下鉄南北線「富沢」駅行き乗車-「富沢」駅下車、徒歩約13分
【クルマの場合】
仙台南部道路「山田」ICより約9分
駐車場:
無料/3台
公式HP:
仙台市電保存館へ出発進行!
時代の流れに逆らえず幕を閉じた仙台市電。仙台市電保存館には、鉄道ファンはもちろん市電を懐かしむ方が数多く訪れます。仙台市内で路面電車が走っていたことを知らない世代の方は、かえって新鮮に感じるかもしれません。そんな時代が楽しめる仙台市電保存館へ、あなたも出発進行!
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